2023-12-02

【報告】ハルマキイベントは夜も幸せ

ほくほくはただエコや省エネをアピールするだけの場所ではない。「生存」という意味では差し迫っていないけれど、いい音楽を聴いたり、おいしいものを食べたり、人生を豊かに生きるために大切な「文化」を発信する場所にしていきたいと考えています。

1月25日の「ハルマキ100本ノック」出版記念イベントはそう考えて、料理店主の島田由美子さんを招いて開きました。昼のトークに続いて開いた夜の部、ライターの山本奈朱香(なすか)さんがおいしいレポートを寄せてくれました。(斎藤健一郎)

夕日が沈んだ南アルプス。夜=本番の楽しみはこれからだ

「ゆっくり味わうしあわせ」 山本奈朱香

ほくほくがある山梨県北杜市は、11月でも日が暮れるとぐんと冷え込みます。でも、冷気をきっちり隔ててくれそうな「ほくほく」の分厚い玄関ドアを開けると、ほわっとあたたかい空気に包まれます。

そして、この日はさらにおいしい香りが迎えてくれました。昼にあった「ハルマキ100本ノック」のトークライブに続き、午後6時から「ローゼンタールinほくほく ドイツワインと料理で冬を楽しむ夕べ」が開かれたからです。

ほくほくの電気は太陽光100%、お湯も太陽光や薪ボイラーであたためたものです。でも、代表の斎藤健一郎さんは「エコや省エネだけでなく、ほくほくをみんなでおいしいものを味わったり、音楽を楽しんだり、様々な人が集まって考えたりする文化の発信の場にもしたい」といいます。今回は、それを形にする初めてのイベントでした。

参加者の多くは「夕べ」の前に近くの温泉に行き、体はぽかぽか、おなかはぺこぺこの状態でほくほくに戻ってきました。

ほくほくのキッチンはカウンター式。その前にテーブルをくっつけて、8人で囲みます。島田さん手書きのお品書きによると、この日の1品目は「焼きりんごとアーモンドのスパイシイな白和え」。気になります。何を入れるんだろう。

そういえば、お昼のトークライブで島田さんは「豆腐には包容力がある」と話していました。ハルマキ同様、豆腐もいろいろな素材と組み合わせておいしく食べられるよ、とのこと。「ハルマキは自由だ」にも心をつかまれましたが、豆腐に包容力があるという表現もすてきです。

白和えをつくる様子が見たくて、準備の間、私はカウンターの横へ。特等席で見学させてもらいました。水切りした豆腐、白味噌とねりごまを混ぜ、そこへ加えたのはカレー粉でした。へぇー、と驚いていると、さらにびっくりすることが。島田さんがまるでおにぎりを握るように、白和えを丸い形に整えているのです。そこに焼きりんごも加えます。あっという間にかわいいボールになりました。

焼きりんごとアーモンドのスパイシイな白和え

ワインで乾杯してから白和えをいただくと、ほんのりスパイシーさがあり、アーモンドのこりこり感と好相性。「おいしいね〜」とみんなの顔がゆるみます。1品目に合わせて島田さんが選んでくれたワインは「ミュラー・トゥルガウ・トロッケン2020」。

ちなみに、白和えのお皿として使われていたのは木の板でした。ほくほくをリノベしたときに使った残りです。ほくほくには、いろんな人が持ち寄った調理道具や食器がそろっていますが、お店のようなプレートがたくさんあるわけではありません。でも、ちょっとした工夫でおしゃれな盛り付けができるんですね。板プレートは、そんな楽しい発見をさせてくれました。

サラダはどこまでもさわやか、と思ったら苦みもやってきておとなを感じる

2品目の「ヨーグルトみそ風味の蒸し鶏と大根、柚子のマリネのサラダ」もおいしかったのですが、やっぱり3品目のハルマキに注目してしまいます。まずは「菊の花とエノキダケのハルマキ」。日中に島田さんが準備しているのを見ていたところ、菊の花と同じぐらいの長さに切りそろえたエノキダケをハルマキの皮で包んでいました。食べると、菊の花とエノキダケが絡み合って、口の中でとろけます。そして2本目は「ビーツとクルミ、黒粒胡椒のハルマキ」。ビーツは蒸されてほくほく。クルミのごつごつした食感との組み合わせが楽しい。

なんていってもハルマキ、ハルマキ

4品目は「塩豚と白いんげん豆、松永さんのねぎ、根菜のほくほくストーヴ煮込み、たっぷりパセリと」。この料理、特に楽しみにしていました。午前中に島田さんがほくほくに到着した際、大きな豚の塊肉を容器から取り出したのを見ていたからです。

赤と黒と炎の共同作業

数日前から塩漬けにしておいたそうで、それを大きな鍋に白いんげん豆とともに入れ、たっぷりの水を加えてから煮込みます。鍋は、島田さんが長年使い込んだ真っ赤なル・クルーゼ。ほくほくの頑健な薪ストーブの上に置かれた赤い鍋は、それだけで絵になります。

ストーヴ煮込みきたー。表情がどうしたってほころんでしまう

ほぼ半日、薪ストーブの上でことことと煮込まれた豚肉はやわらかく、白いんげん豆のほくほく感、ねぎのとろとろ感もたまりません。

やわらかく、ほくほくで、とろとろです

4品目に合わせたワインはシュペートブルゲンダー・トロッケン2020。料理のおいしさばかり書いてしまいましたが、この日は「ドイツワインと料理で楽しむ夕べ」。それぞれの料理に合わせて島田さんが選んでくれたワインは、どれもすてきなマリアージュ。時々みんなで「ワインの食レポ」に挑戦しながら、おいしく、楽しく杯を重ねました。

途中からうとうとしている人も何人かいましたが、それもまた幸せなひとときです。

外は寒くても室内はほくほく。気持ちよさそうです

5品目は「松永さんの干し柿とクルミ、ゴルゴンゾーラのハルマキ」。おなかがいっぱいでも、甘みと塩気がちょうどよく、ぺろりと食べてしまいました。ちなみに松永さんは近くに住むご夫妻です。いつも優しい笑顔のおふたりで、この日も育てた野菜をにこにこと手渡してくださいました。妻の華さんは木版作家さんで、昼のイベント参加者全員に「ハルマキ課」という消しゴム判子を押したしおりをプレゼントしてくださいました。かわいい!大切にします。

ハルマキ課のしおりは華さんから参加者へのプレゼント

さて、「夕べ」は日が変わる頃まで続きました。この日は初参加の人も初対面同士の人もいましたが、テーブルを囲んで一緒に味わい、「おいしいね」と言っているうちにうちとけ、「次は東京のローゼンタールでハルマキ会をしよう!」と盛り上がっていました。社会課題についてまじめに話すこともあれば、音楽に合わせて踊りだすことも。人が集い、おいしいものも会話もゆっくり味わうことって幸せだなぁ。しみじみと感じた夜でした。(おわり)

味わい、うちとけ、おだやかでゆっくりな夜

宴の終盤にバッティングフォームを確認し始めた人たち。なぜ?いまとなってはわからない

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