2025-11-01

オンラインが苦手だから来ませんか──Green Journeyとほくほくの出会い

「ぼくはオンラインの取材は苦手なので、ぜひ来て下さい。」

八ヶ岳エコハウス「ほくほく」の斎藤健一郎さんは、ある団体から取材依頼を受けたとき、こう返したそうです。

その団体とは、Green Journey(以後グリジャ)。

名古屋を拠点に「人と地球をつなぐ暮らし方」を提案するNPO法人で、月1回ポッドキャストを配信しています。代表はラジオパーソナリティとしても活躍する空木マイカさん。コンポストや畑づくり、地域循環のプロジェクトなどを通じて、日常の中に“持続可能な選択”を広げています。

greenjourneyについて詳しくはこちらをご覧ください。


取材チームが数名で来るだろうと思っていたから、子どもから大人まで15名が来たので驚きました。にぎやかで楽しくなりそうな予感です。

昼食を全員でとる予定でしたが、予約していたお店がたまたま休みで、集合は14時、ほくほくに急きょ変更。名古屋からは片道3時間以上。中央道も工事中で、寄り道もそれぞれ。まさに小さな“ジャーニー”です。

マイカさんがほくほくに到着し、車から降りて開口一番、
「名古屋でいつも会ってるメンバーがそろってるのに、ここが山梨って不思議〜」
と笑顔で声をかけると、周りの空気が一気にやわらかくなりました。

その日は珍しく雲が多く、ほくほく自慢の八ヶ岳や南アルプスは姿を見せません。

でも、集まったメンバー全員がマイカさんの声に、「山が見えなくてもいいよね」と雰囲気が変わったように感じました。ぼくも名古屋在住なので、地元ラジオ局ZIP-FMで聞いたことのあるマイカさんの声が、ほくほくの前に響くのは不思議~な感覚でした。

迎える斎藤健一郎さんは、ウェルカムペーパーを準備。
静かなほくほくで、みんなを思い浮かべながらにこにこと書いたことが伝わる、かわいい作品です。

当日の流れは、収録後のことくらいしか決まっていません。出たとこ勝負師の健一郎さんに、マイカさんも見事に応えます。

「ぼくたちがいきなり説明するんじゃなくて、みんなで光熱費ゼロ円の理由を探してもらうことからやってもらってもいいですか?」と健一郎さん。

「じゃあ、みんなでエコハウスの秘密を探す感じから録音しますね!」とマイカさん。そんなふうにして、ポッドキャストの収録が始まりました。

 

「ここにあるのは太陽光発電でしょ。蓄電池はないのかな」、

「手前にあるのが太陽熱温水器ですよね。煙突もあるから薪ストーブかな」

「玄関ドアが分厚いし、木でできてますね。」

グリジャメンバーは次々に、エコハウスの秘密を見つけていきました。

あとで答えを発表するのはぼくの役です。みんなが秘密を全部見つけてしまうと、出番がなくなってしまうので、見逃してくれるたびに心のなかでガッツポーズをしていました。

「探してください」と口で言いながら、見つけるなと囁く本音。

無事、“発見されなかった謎”の解説を終えると、マイカさん・健一郎さんを囲む形でトークセッションの収録がスタートです。
椅子を円弧型に並べ、マイクの準備が整うと、「今日は皆さんの体温で室温が上がるか、実験してみましょう。」と健一郎さんが一言。

再エネ100%の暮らしというと設備ばかりに目が行きがちです。でも、建物そのものの性能も大事だということを体感してもらいたいのです。
曇りの日に暖房を使わずに室温が上げれば人間の熱で室温が上がるということは、体温で室温が上がることを眼でみて、感じることができます。

外は曇り時々雨。外気温17℃、室温22.7℃でスタート。
マイカさんと健一郎さん、時にメンバーがからみ、まるでリハーサルを積み重ねたようないい感じのトークセッションです。

しかし、サラサラと流れるようなやりとりの中に、“えっ、健一郎!今の、気温じゃなくて室温と言うべきだろ”、“マイカさん、石炭の単位はトンじゃなくて万トンですよ”などと小石につまづくような言い間違いが気になり、体温が上がっていきます。

“今回来られなかった人にもほくほくに来るように言ってよ” “学生にもぜひって言ってよ”流れを止めてはいけないと我慢のダムが危険水域に達し、収録が終わるというその時、決壊しました。「これを言って欲しいんです」と大きな声でまくしたててしまいました。

すると、「英二郎さん、自分で言ってよ」と健一郎さん。「川合さんも入ってくれて良かったのに~」とマイカさん。グリジャメンバーが優しい笑顔ぼくの席を作ってくれました。一旦赤面した後、火照りがすーっと消えていきました。そんなわけで、PODCASTの後半に少し、ぼくの声が入っています。ぜひPodcastで聞いてみて下さい。

 

このトークセッションで一番印象に残ったやりとりはこれ。

「50年後の人たちが、今を振り返って『昔は電気代を払ってたの?』と言う社会になっていたらいいですよね」と健一郎さんが話した後に、「もう少し近い将来、30年後にどんな社会になっていてほしいですか?」とマイカさんが返しました。この続きばぜひPodcastを聞いてみて下さい。

マイカさんは学生時代に世界の格差をみて社会問題に目覚め、健一郎さんは東京電力の原発事故をきっかけに節電を極めることを始めました。

〇〇ファーストが話題になるなか、自分たちを優先させるという姿勢ではなく、未来に向かって“今できること”を楽しんで実践しようよ!という、姿勢が共通しているように感じたからです。また二人とも、“忘れ物が多い”というところも共通していました。

収録中の実験は見事に成功。最高室温は23.9℃、体温だけで1℃以上、部屋が暖かくなりました。

トークセッションも気持ちよく終わり、部屋も心も温かくなったところで、集合写真の撮影です。かけ声はもちろん、「グリーンジャーにい〜!」でした。

今回来てくれたグリジャのみなさん、またのお越しをお待ちしています。
そして、まだ来たことのない方も、ぜひ“ほくほく”へ。 (川合英二郎)

 

 


あと書き

さて今回のイベントは、グリジャメンバーの布野裕子さんの提案によるものでした。

布野さんは、2016年5月、南知多にあるゲストハウス「ほどほど」で斎藤健一郎さんが「5アンペア生活」のお話をした会に参加したことがきっかけ。出会いから9年の時を経て、再びGreen Journeyとつながりました。

2日間交流する中で、参加してくれたメンバーと共通の知人が不思議なほど多く驚きました。

ぼくがそのことをブログにこうとしたら、健一郎さんからそれはやめておこうと止められました。

「共通の知り合い、つながりがあることは素晴らしいしこと。
でも、既に出来上がっている輪が強ければ強いほど、新しい人が入りにくくなるかもしれない。
今回だって、英二郎さんの全く知らない人が来てくれて良かったでしょ」と言うのです。

延べ200人がリノベワークショップに参加し、毎年200人以上の人が見学に来てくれるのは
健一郎さんの、開いた気持ちがあるからだと今更ながら学びました。

それにしても、健一郎さんがオンラインを苦手で良かった~

オンラインだったらこの笑顔は見れなかった。

 


マイカさんの写真を撮る人の写真を撮る。

 

いつも1~2足しかないのに、お客さんが来るとずらっと靴が並ぶ。

懇親会は”さの屋”のジビエ。写真はしゃぶしゃぶ用のいのしし。今回は注文しなかったけれど、熊が安くなっていた。

朝食準備。ふのままにキャベツの千切りを作ってもらっている。ぼくは無限キャベツのレシピチェック。後方にパンを焼く少年。美しい分業。

毎日走ることを日課にした”ちゃんめぐ”さん。ランニングシューズ持参で参加してくれました。後方は、坂を走って登れない健一郎さん。

 

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