「奈朱香バー」が初オープンしました
初めての店に行くときは、いつも不安だ。
おいしいのか
たのしめるのか
お店と仲良くなれるのか
だから3月8日夜、ほくほくで初めて開いた「奈朱香バー」に集まった人は、それぞれが勇気を持って来てくれたのだと思う。
ぼくの計画は「インド帰りだから疲れていてごにょごにょ、ごにょごにょ」というライターの奈朱香さんを説得し、京都から招聘して料理をつくってもらう。さらに、泡盛をこよなく愛し現地ツアーまで主宰するデザイナーの岡山進矢さんは東京から呼んで、選りすぐりの泡盛・球磨焼酎を出してもらうというもの。
いい料理といいお酒があれば、もうそれだけでしあわせな空間と時間になる。
そういうもくろみだ。

花火を打ち上げたような色彩豊かな奈朱香バーの料理に、「客」たちの心も躍る
店主の奈朱香さんがつくったのは
・ホタテのサラダ晩柑ドレッシングあえ
・おあげを焼いたん
・ごちそうなます
・エノキとササミののりあえ
・さわらの味噌漬け
・わかめのマリネ
・大根の皮のお漬物
料理が供されるたび、みなの箸が一直線に皿に向かってのびる、のびる。そんなにお腹すいてたの?? というくらいの勢い。決して奪い合うわけじゃないけど、確実に自分の分は確保したい。そんな感じ。
料理がおいしいのだ。
おいしいものが通過する口腔、食道、胃にさらに燃料が投下される。多くの人にとってなじみが薄いであろう琉球の酒「泡盛」と球磨焼酎だ。
岡山さんは丁寧な説明を加えた後、手を替え品を替えてグラスに注ぎ込む。ソーダを入れたり、コーヒーを加えたり、はたから見ていると、まるで魔法でもかけているみたい。かかってしまった参加者たちは、おもしろいように杯を重ねていく。
なんて客観的に眺めていたのは最初だけ。ぼくも途中からは完全にとりこにさせられ、次は、次は? と求めていた。
時間がたつにつれ、初対面の人が多かった場の空気がやわらぎ、心身があたたかくなっていく。外の気温は3℃。断熱のきいたほくほくの室温も25度を超えていった。暑い。クーラー入れようか。
最後は薪ストーブの上でトコトコとあたためた「おでん」の登場だ。もう心も身体も部屋も一直線にあったまっていくしかない、というとどめのような出汁しみしみのおいしさ。薄くのばした料理では決して味わえない、芯からぬくもりを感じるしみる味だった。

薪ストーブにかけて、味がしみしみのおでん。心の奥のところにしみました。
ぼくの当初のもくろみは外れた、と言わなくてはいけない。
この日、奈朱香バーに集まってしあわせな時間と空間をつくったのは、おいしい料理といい酒だけではなかったからだ。勇気を持って集まった「客」もまた、それぞれがいい時間をつくっていた。みなが主役で、一人ひとりがいい空間を形づくっていた。
カウンターに立ってみなが溶けていく様子を見ながら、しあわせ、という感情以外起きなかった。
お集まりのみなさん、ありがとうございました。準備が大変で、きっとしあわせ以外の感情もあっただろう奈朱香さん、進矢さんは特にありがとう。
ほくほくに、おいしくて、たのしくて、いい店ができました。
このしあわせを、享受できたのはまだわずかな人だから、今後広めたいと思う。
でも、つぎにいつ開店するかはわからない。そのときはなんらかの手段でお知らせするように努めます。たどり着いてくださいね。(斎藤健一郎)
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