3/8イベント報告 「快適な住まいは人権である」
「快適な住まいは人権である」
—— これは、今回のイベントを通じて強く印象に残った言葉です。

ほんとに満員御礼。講師、参加者、メディアの方を入れて22名がいました。
3/8(土)のほくほくイベントのメインゲストは建築家 スタジオA建築設計事務所代表の内山章さんです。
斎藤健一郎さんと、ほくほくの建て役者 梶原高一さんの3人に話をしてもらい、私(川合英二郎)が進行を担当しました。
健一郎さんは本業の新聞記者だけでなく、講演に、審査員にと人気絶好調。梶原さんは新規依頼を2年もお待たせしているほどの引く手あまたぶり。内山さんは新築・リノベを問わず、デザイン・性能のバランスの取れた設計もするし講演・コンサルでも大活躍しています。
事前打ち合わせは、ほぼゼロながら、“幅広く、濃い内容を聞けた”との声を参加者からいただきました。これこそが、3人衆が人気者たる所以かもしれません。

健一郎さんと梶原さんによるほくほくストーリー紹介
3人の視点をざっくり分類するとこんな感じです。
健一郎さん:どうして、ほくほくを始めたのか
梶原さん:どのように、ほくほくを建てたのか
内山さん:なぜ、ほくほくを当たり前にするのがいいのか
メインゲストの内山さんのお話は内容もスタイルも、これまでほくほくにやってきた人たちと全く違ったものでした。健一郎さん、梶原さんの話を聞き、参加者の反応を見ながら、パソコンをぱちぱちと操作していました。そして、自分の番になると、数百枚あるスライドの中から、適切なものを瞬時に選び、1.5倍速のような早口で話をします。
さすが、意匠設計も得意とする建築家! スライドも(僕が作るものと違って)美しい。内山さんの話は、大容量のデータをUSBにコピーするようにしみ込んでいきました。
その中で出てきた言葉が、「快適な住まいは人権である」です。
言葉は、1997年に発刊された、“居住福祉(岩波新書 早川和男著)”がベースです。本来、快適な住まいは当たり前でなければいけない。社会的弱者ほど快適な住まいが保障され、健康に過ごせる断熱性能、耐震性能があるべきなのに、逆に劣悪な住環境に追いやられている。そういったことをデータを繰り出しながら、内山さんは語ります。

内山さんが紹介していた本を購入にし読んだ。快適な住まいが皆に届かない日本の残念な住宅供給システムの事情が分かる「居住福祉」岩波新書
では、一般の人々の住まいの現状はどうなのか?
2025年4月から国内で義務化される断熱基準は、1999年に出された基準がベースになっていて、欧米や隣国の韓国に比べてもとても遅れたものです。これから建てる家は、2050年のカーボンニュートラルの時代にも建っているわけで、2025年基準で建てた住まいは、25年後には低性能の烙印をおされてしまうかもしれません。エアコンでも暖房でも、エネルギーをたくさん消費して快適さを維持しようとする家では、これからの燃料価格上昇についていくのもしんどくなりそう。
内山さんの話を聞いて、「快適な住まいは人権である」という言葉が単なるスローガンではなく、これからの住まいの在り方そのものを示しているのだと実感しました。
参加者から、「すでに建っている家を高性能化するにはどうしたらよいのか。」という質問がありました。
住まいの傷み具合や予算などによっては、建て替えも選択肢の一つです。限られた予算の中で優先すべきは、以下の順番になります。
1.窓のリフォーム(サッシ交換または内窓の設置)
2.天井の断熱強化(断熱材の追加と壁上部の気流止め)
3.壁や床を剥がして断熱・気密を強化する
特に1.の窓リフォームについては、2025年も昨年に引き続き補助金が出る予定です。補助金を活用するなら、早めの行動がおすすめです。
WHOは、冬季の室温を、寝室を含めて18℃以上に保つことが健康上望ましいとしています。しかし、日本の9割の住まいはこの条件を満たしていないという調査結果もあります。

リフォームでまず手を付けるのは窓。窓枠のみ大工さんに作ってもらい、ポリカーボネートで内窓は自作し、セミDIY内窓の取付けが出来ると内山さん。
もし快適な住まいが人権だとするなら、日本はまだその権利が十分に保障されていない国なのかもしれません。
そもそも健一郎さんは、「ほくほく」のような住まいの性能を当たり前にすることで、電気やガスを買わずとも快適に暮らせる社会を目指しています。
そう考えると、ぼくたちは人権活動家??
今回のイベントも笑いがあり、楽しく学べる時間となりました。背負っているテーマは重いですが、我々ができるペースで、楽しみながら活動を続け、共感の輪を広げていきます。次回は4/19(土)、5/17(土)に一般公開イベントを開催予定です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
イベントの裏話
毎年、3月11日に近い週末は、ほくほくでイベントをやることに決めています。それは、ほくほくの活動の原点が東日本大震災の原発事故にあるからです。
昨年もイベントを開く予定でしたが、能登半島ボランティアに予定を変更したため、2年ぶりの3・11イベントでした。また、梶原高一さんやオフグリッド担当の佐藤博士さん、斎藤健一郎さんと事務局の私(川合)が同時に集まるのも1年以上ぶりでした。
メインゲストの内山章さんに来てもらうと決まったのは、イベント開催日まで2か月を切っていました。
2018年に、内山さんが理事を務めるNPO法人南房総リパブリックの断熱リノベワークショップに健一郎さんが参加して以来のお付き合いでしたが、内山さんはまだほくほくに来たことがありません。
1月18日の新年会の時に、今回のイベントゲストについて最終確認すると、健一郎さんは「イケおじ(イケてるおじさん)のウッチー(内山さん)に聞いておくよ」とのことでした。とはいえ、健一郎さんはなかなか行動しないので、僕から内山さんに問合せると、OKの返事が来て、ほっとしました。いつも、ほくほくの企画はぎりぎりバタバタです。
急いで案内を作って、2月頭に告知を出したのですが、最初の2月中旬まで申込が少なく心配していました。しかし、人気3人衆がそれぞれのSNSで発信すると、パタパタと申込が入りはじめ、地元紙の八ヶ岳ジャーナルが3/1発行の紙面で告知をしてくれるころには、ほぼ満席。当日は本当に満員御礼でした。
参加者もさまざまです。遠くは、千葉県の銚子や鴨川から、近くはほくほくから車で5分ぐらいのところから来ていただきました。
築300年の古民家からログハウスへ住み替えて、当初は快適だったものの、次第に断熱性能に満足できなくなり、現在は内山さんに自邸を設計してもらっている恵さんは、高性能な住まいを参考に見学したいと参加しました。
いま東京と山梨の二拠点生活をしていて、将来的に高性能賃貸の建設を計画している人や、以前ほくほくのワークショップに参加して、自宅の建て替えやリノベーションを検討している方もいらっしゃいました。
昨年のイベントに参加し、将来移住する実家のリノベについてより具体的なアドバイスを得たいと再度足を運んでくれた方もいます。
ほくほくのリノベワークショップに参加してくれた方が、自宅の新築かリノベ検討のために来てくれた方もいました。
こうした参加者のみなさんがそれぞれの計画を実現させて、ほくほくNEXTプロジェクトの一例として紹介できる日を楽しみにしています。
今回、健一郎さんは、イベント後の懇親会に特に気合いをいれていました。こちらもとてもいい時間でした。
その報告は筆の遅い新聞記者、健一郎から改めて!2年くらいかかるかもしれないけど。 (川合 英二郎)
(参加者全員の自己紹介で始まるのが、ほくほくのイベントの特徴です。皆さんのことを紹介したいのですが、一部の方の紹介になってしまいごめんなさい。)

太陽熱温水器の説明をする僕(川合)

薪ボイラーの説明をする健一郎さん。焚き付けはよく燃える朝日新聞が一番!

バッテリー小屋で説明する佐藤博士さん。
コメントを残す