田熊さんと名市大学生の合宿2024
「何をするか、よく分からないままに来たんです」
ほくほく合宿に集まった全員が、異口同音に
そう口にしました。
さらには、斎藤健一郎さんまでも
「僕も今日どうなるか全然知らないんだよね」
と苦笑いする始末。
こうして、何とも出たとこ勝負な雰囲気で始まった合宿。
果たしてその結末やいかに――
今回のゲストは、建築家であり母校の早稲田大学で講師も
勤める田熊隆樹さんと建築やインテリアの勉強をする大学生。
参加した学生は3人。
2022年テカリ小屋仕舞い、2023朝日新聞地球会議などで
つながりのある名古屋市立大学3年生のゆきのさんが、
後輩の1年生2人を連れてきてくれました。
ほくほくを通じで持続可能な暮らしを肌で感じてもらうと
ともに、田熊さんの学生時代のお話を聞いてもらって、
これからのキャンパスライフのヒントになったら良さそう
です。
訪問する場所は、昨年静岡理工科大学の脇坂圭一先生
が学生と来てくれたルート(チームシェルパ&ほくほく)に
裸足の研究者 金子潤さんと、よく笑う美保さんの自宅
を加えました。
■土に還る家 清里 金子邸 1日目 14:20~16:00
金子邸は、基礎にコンクリートを使わない石場建て、釘や
金物を使わない貫工法を使い、土に還せる工夫がみられます。
また、バイオトイレ、太陽光発電、ソーラー給湯システム、
薪だきの風呂釜、薪ストーブと再エネ利用設備が新旧混在
しています。
住み手の哲学が強く出ている金子邸はとても珍しい建物です。
建築家の田熊さんの目、
3回生のゆきのさんの目、
1年生の2人の目、
それぞれの目で、理解しようとする姿は、それを見る僕まで
楽しくなってきます。説明する金子潤さんも、分かってくれる
人がきたせいか、いつもより説明が丁寧な気がしました。

水、風を通す金子邸。土地に負担をかけない家だ。
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金子さんは2022年1月ほくほくデビューです。
寒い中、草履(ワラーチ)にオレンジ色のベストでやって
きました。
穴があくほどほくほくを見まわす姿に、
めんどくさそうな人が来ちゃったなというのが
ぼくの第一印象。

ほくほくにやってきた金子潤さん。2022年1月撮影
後にこれから建てる自宅についてアドバイスが欲しいと
美保さん(奥さん)と工務店の人をほくほくに連れて
きました。
金子さんの住まいは、ほくほくよりも標高が400m高く、
気温が2~3℃低い清里にあります。ほくほくで採用
されている設備よりも凍結に強いものが必要です。
金子邸の竣工までに、いろんなやりとりがあるなかで、
金子さんと僕のめんどくささの歯車がかみ合い始め、
今ではほくほくのパートナー的な存在です。
なので、今回も合宿ルートに金子邸に入れることを
快諾してくれました。
潤さん、美保さん、いつもありがとうございます。
■ほくほく 1日目 16:30~24:??
金子邸が楽しくて出発が遅れ、ほくほくで日没を見ることは
できませんでした。でも、移動中にとてもいい感じの
富士山が見えました。

たまに見えない日がある富士山。この日はばっちり
到着すると、まずは薪ストーブの着火式。
16℃に冷えたほくほくに火を入れます。みんな着火は
大好きです。
そして、いつもの薪割りをやったり、薪ストーブでピザを
焼いたり、ダッチオーブンでロースポークなんかを作って
自炊しました。
利用者が多い時は、みんなで近所のたかねの湯(温泉)
に行くのですが、ほくほくに残って太陽熱温水器(英二郎の湯)
のシャワーを使ってくれた人もいました。

マッチ1本で朝日新聞に火をつけると勢いよく炎上!
なにをするかのか良く分からない状況で、緊張気味だった
一年生の二人は、合宿メニューをこなすうちに徐々に緊張
がほどけて行ったようです。
彼女たちにとって自分のお父さんのような年代のおじさん、
大学の講師、大学の先輩、そして、秘密兵器ともいえる
健一郎さんの小さなお嬢さんがいて、不思議なまとまり感が
出来ていきました。

2分30秒ダンスを披露してくれた健一郎さんのお嬢さん。 ハイファ~イブっていうサビのところで手をぺちぺちっとするところが可愛かった。
食後のおしゃべりタイムはSNS、学校の課題、将来像など
いつものほくほくより若い話題の中に、笑いあり、
ちょっと涙もあったりして、とてもいい時間でした。
そんな中、空気がピリッとする瞬間がありました。
学生のある質問に「大きな主語はいけないよ」と、
健一郎さんが言い放ちました。
“最近の若者はさあって言われたらどう思う?
〇〇新聞は××だとか、結局個人の意見を大きな主語にのせ、
曖昧なまま、なんとなく、無責任に個人の意見を
はきちらすのってどう?
僕も普段から大きな主語を使うことがあるので、
学生の質問への物言いでしたが、自分にも刺さるものが
ありました。
「日本の家は寒い」と言えば、多くの人がうなずく
のではないでしょうか?
これも大きな主語。しかし、ほくほくも日本の家ですが、
「ほくほくは寒い?」と聞けば、その場にいた、全員が
首を横に振ったはずです。
外気温-3℃でしたが室温は26℃でしたから。
「でもさ、“ほくほくは”という小さな主語を“日本の家は”
という大きな主語に変えられるように、この活動を続け
ているんだよね」と、健一郎さんとにやっと顔を
見合わせました。
時計が24時を過ぎたころ、室温はさらに
1℃上がり27℃。それぞれの床に就きました。
■ほくほく 2日目 7:00~
目覚ましの音がなるわけでもなく、7時を過ぎると、
みなごそごそと動き始めました。
薪ストーブの火は消えていましたが、室温は22℃。
西側のロールスクリーンを上げると、
夜とは打って変わって、南アルプスの山が
視界に飛び込んできました。

身体が暖まっているので、屋外に出るのも楽
朝食は田熊さんとゆきのさんと3人で作りました。
7人分のパンケーキを手際よく焼くゆきのさんの横で
「珈琲淹れる時は沸騰したお湯はダメですよね」と田熊さん。
こういうやりとりは幸福度を上げてくれます。
南アルプスを見ながらみんなで食べる朝食はいいものです。
ぜひ皆さんにも体験してほしいと思います。
■田熊隆樹さんのレクチャー 2日目 10:15~11:20
楽しいと時間が過ぎるのは早い。10時スタート予定の
田熊さんの特別レクチャーは15分遅れました。
今回田熊さんをメインゲストに招いたのには理由が
あります。
1.海外(台湾)の設計事務所で仕事をしていた
2.学生時代にアジア中東の住まい単独調査をしている
3.学生と年齢が近い
これらのことから、学生がきっと興味をもつと考えた
のです。
事前に田熊さんにはレクチャーはいらないと伝えた
のですが、流れでやってもらった方がいいことになり
急遽引き受けてもらいました。
田熊さんは大学院を休学し、アジア中東11か国の住まい
調査に行きました。
「あなたの家を見せてくれませんか?」という
中国語mayitakealookat yourhouseと英語で、民家を
みせてもらいながら写真を撮り、スケッチを書き溜め
たものが本になっています。
行動力、洞察力、推察力、そして豊かな表現力
持つ田熊さんのお話は、2時間でも3時間でも
聴いていたかったです。
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田熊さんとの出会いは2024年5月18日のほくほく
イベントに参加してくれたことに始まります。
茨城県古河市の今住んでる家が寒くてたまらない
ので、自宅のリノベの参考にとやってきてくれました。
田熊さんのプロフィールは書ききれないので、
こちらのリンクをみて下さい。
実は健一郎さんも学生時代にアジア横断自転車旅を
しています。田熊さんの探訪ルートと被るところがあり、
二人は同じ土を踏んでいたかもしれません。
強い縁を感じています。
■セルフビルドコミュニティ
チームシェルパ 2日目 11:50~13:30

チームシェルパの駐車場からパチリ。 左の壁のないような家はイオ(竪穴式住居)
チームシェルパは、ほくほくの先輩とも言えるエコハウスが
小さな村のようになっています。
店主の京子さんは一級建築士で、隣にある自宅も、
カフェも仲間と一緒にセルフ設計&ビルドで建てたもの。
村?の中では太陽光発電、ソーラー給湯システム、薪ストーブ、
五右衛門風呂にワイン樽で作ったサウナまで使われています。
こういうものが生活の中で普通に使われているところ
を見て、どう感じたのかまた学生に聞いてみたいです。
チームシェルパは、一人で切り盛りするカフェなので、
今回のように大人数で訪れるとごはんが出てくるのに
時間がかかることもあります。
でも待つ時間も大切です。
お店にあるものを見たり、外を散策したり、京子さんと
お話しているうちに美味しいカフェごはんが出てきます。

右上は野菜プレート、左下はタコライス。へるしい(ヘルシーと美味しい)感じです。
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シェルパ斉藤さんは、紀行作家です。BE-PALなどのアウトドア雑誌
でコラム書いたり、本を書く作家です。ほくほくの斎藤健一郎さん
とは、お互いの取材がきっかけで知り合いになったそうです。
■合宿を終えて
合宿では金子邸、ほくほくと来てチームシェルパが最終の建物でした。
いずれの場所も、エコだったり、再エネフル活用でしたが、
そのことで不便や、面倒なことはなかったはずです。
往復7時間かけ、1日過ごすのはとっても時間がかかるけど、
とってもいい時間だった思ってもらえたらうれしいな。
さて、省略してもこの内容の合宿です。
前情報が少ないほどサプライズがあるではと思って
参加者への案内をばっさり削りました。
でも終わってみれば、参加者全員から
「良かった、楽しかった、またほくほくに来たい」と異口同音に
口にしてくれました。僕もほんとに楽しかったです。
出たとこ勝負で始まったこのほくほく合宿
「何をするか、よく分からないままに来た」で迷惑をかけて負け
「良かった、楽しかった、またほくほくに来たい」で少しは勝てたかな?
リクエストもあったので、延長戦(新たな合宿)を企画しますね。
川合英二郎

実際に学生からもらったメッセージ。金子さんが和田さんになってしまっている。盛沢山すぎて混乱しちゃったかな。

金子潤さんは腱引きという整体のような治療技術を持つ。緊張、淀みを取り除いて流れをよくして、体を治す。金子さんの住まいも同じ考え。風も水も流す。そして土に還るがコンセプト。我慢はしない、超高性能でもない、自然体な住まい。家も住人も濃い。

暗くて寒くても斧を振る学生。僕は斧に体重を乗せて割る。彼女たちは斧に想いをのせて割っているような気がする。

薪ストーブでピザを焼き、ダッチオーブンでローストポーク作った。

ミニオフグリッドの佐藤博士さんがくれた大量のグリーントマトでフライドグリーントマトも作ってみた。料理も再エネ100%

2022年にほくほく合宿に来てくれた設計事務所春摘の和田純さんが教えてくれたデザート スモアをアレンジした。りんご、バナナ、ナッツ、オレンジ、マシュマロ、ホワイトチョコレート。これに金子さんからもらった濃厚アイスクリームを添えて食べた。

チーム感がいいでしょ。朝ごはんを作るカフェチーム ゆきのさんが全員分のパンケーキを焼き、田熊さんがコーヒーを淹れ、スープのお守りをする。ぼくは幸せでした。

田熊さんのアジア探訪記レクチャーは楽しすぎる。写真は田熊家のワンチャンを寒い部屋に閉じ込めていたら、ふすまをぶち破って暖かい部屋に逃げるところ。寒くてふすまを突き破った田熊家のわんちゃん。僕たちもこの講義でふすま(壁?)突き破る勇気をもえた。

チームシェルパの京子さんは僕たちのためにお店の前に本日13時貸し切りの告知を出してくれていました。後に知ったのですが、facebookにも!京子さん、そして我慢してくれた他のお客さんありがとうございます。

「やっぱり若い子はタコライスなのよ」と京子さん。学生全員がタコライスを注文し、冬麺というメニューを選んだ32歳の田熊さんがおじさんチームに分類されて気の毒でした。

3年生のゆきのさんはほくほくと名市大のつなぎ役。2022光岳小屋締め手伝いプロジェクトがきっかけ。“ゆきのちゃん”と呼んでいたが、わずか2年で“ゆきのさん”になっていました。勇者の作業、バケツプリンひっくり返しの儀式を譲った。

学生が来るならイオを体験しなくてはと、シェルパ斉藤さんが、到着1時間前から焚火をしてくれていた。シェルパ斉藤さんも誰が来るかよく知らなかったそうです。ごめんなさい。
またね
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